このような方へ 適応症例

せい氣院で過去にご相談を受けた症例などをご紹介します(下線のあるものはクリックすると記事を読むことができます)。

身体面

肩こり/首の張り/腰痛(急性・ぎっくり腰)腰痛(慢性)バセドウ病/頭痛/胃痛/椎間板ヘルニア/頸椎ヘルニア/肋間神経痛/座骨神経痛/仙腸関節痛/便秘/帯状疱疹/じんましん/外反母趾/手足のしびれ/摂食障害(拒食、過食)/自律神経失調症/動悸/ぜんそく/癲癇(てんかん)/めまい/ほてり/冷え/むくみ/不眠/よく転ぶ/頭をぶつけやすい/検査には現れないがいろいろな自覚症状があって苦しい(不定愁訴)

婦人科系・妊娠・出産・育児関係

生理痛/生理不順/PMS/更年期障害/不妊/つわり/逆子/妊娠期の腰痛や股関節痛/育児ノイローゼ/育児のよる過度な疲労/疲れているのに夜眠れない

心理面1ー対人関係の悩み

〇人より余計に緊張してしまう/赤面・あがり症・ふるえ

〇 仕事が長続きしない/職場になじめない

〇親に対する感情の整理をつけたい/親から自立したい

〇子供の悩み/おねしょ/盗癖/多動症/意思疎通ができない/何処とは言えないが最近子供が妙な雰囲気になっている気がする(お子さんのお悩みは保護者の方も並行して整体を受けていただきます)

〇夫婦間・恋人との関係/愛憎、性の悩み

心理面2-うつ・不安・神経症など

〇出どころのわからない暗い気分からなかなか抜け出せない/抑うつ

〇不規則な気分の抑揚に振り回されやすい

〇楽しいこと、自分の好きなことをしているつもりなのに、何故か気持ちがはれない

〇体に力が入らない(筋無力症)/やらなければいけないことがあるのに、思った通りに動けない

〇何事も心配し過ぎて疲れやすい傾向にある

〇将来や病気に対するつよい不安がなくならない

心理面3-自己探求・自分理解・自己実現

〇怒りっぽいなど自分の性格を変えたい/心の癖に悩まされている

〇いつも同じような失敗のパターンがあるので原因を知って解決したい

〇自分が何をやりたいのかがわからない

〇現在の仕事の中でもっと自分の力を発揮したい

〇仕事を変えるべきか悩んでいる

〇具体的な目的は見あたらないけれど、自分のどこかに問題がないかを確かめたい

〇整体・カウンセリングを受けることで自分の中にある可能性をもっと開拓したい/よりよく生きるとはどういうことかを深く考えたい/全力を発揮したい

その他

上記以外にも何か気なること気持ちの面で引っかかっていることがある方、あるいはどこに相談してよいかわからない問題や、身近な人には話せないけれど自分一人で抱えきれない悩みなどをお話しに来院される方もいます。

「悩み」は必ずしも具体性のあるものばかりではありません。

自分が生活していて何かしっくりいかないような感じがあれば、その不満の奥にはあなたの知られざる心の力が隠れている可能性があります。

身体の症状は必ず何らかの心の偏りを訴えています。病気をうまく乗り越えることで人間は成長できます。身体の症状を通じて、「自分とは何か」を考えるきっかけとすることが整体指導の大きな役割といえます。

自律神経失調症と整体

身心の調和を保つ自律神経

自律神経(系)とは内臓や体の各器官(目や耳や口など)の働きを自動的に調整してくれる神経です。「交感神経」と「副交感神経」に大別され、「緊張」と「弛緩」という反対の作用が交互に働くことで身心全体のバランスを取っています。

具体的には昼間活動するときには交感神経が主動となり、夜眠る時には副交感神経主動になります。この2つの神経が交互に切り替わって働いている状態を一般的には健康体と考えています。

必要な時にはしっかり緊張し、休む時には深くリラックスできることは、健康生活を保つ上でもっとも大切な機能です。私たちが何もしなくても、心臓が動きつづけたり、食べたものを消化したり、体温を一定に保ったりできるのは、全てこの自律神経が正常に働いているおかげと言えます。

逆に自律神経の働きが変調をきたすことで、身心にいろいろな異常が起こりうるのです。そのようにして現れる症状を総じて「自律神経失調症」と言っています。

自律神経失調症によくられる症状

自律神経失調症はよく耳にする病名でありながら、その具体的な症状や治療方法どはあまり正確に認知されていません。「何となく身体の調子がわるい」と思っていても、しばらくそのままにしてしまうとか、病院に行ったとしても「特に異常は見つかりません」と言われて、その後どこに相談したらいいか判らないということもあります。

また原因が解らないことで余計に不安になったり、病名(診断名)が付かないために周囲の人にも自分の大変さが理解されず、そのストレスで症状がさらに悪化する、ということもあるようです。このような悩みを持つ人の中に「自律神経失調症」と考えられる方が多くいらっしゃいます。

例えば、自律神経失調症の主な症状には次のようなものが上げられます。

■身体面の症状

夜ぐっすり眠れない、朝起きると心臓がドキドキする(動悸)、おでこが熱い(ほてり)、いつも疲れている、だるい、胃の不快感、吐き気、肩こりがひどく治らない、腰痛、慢性的な下痢や便秘、手足がしびれる(またはビクッとなる)、冷や汗・あぶら汗が出る、過呼吸、生理不順・・・など

■精神面の症状

理由なく気分が落ちる(鬱的気分)、何もしていない時に昂揚(興奮・カッカ)する、孤独に感じる、気持ちのアップダウンが激しい、何かに追い立てられるように焦ってしまう、原因不明の不安感・・・など

こうしてみますと、何か身体に異常をきたしたらみんな「自律神経失調症」と言えそうなくらいです。それもそのはずで、実は自律神経失調症はその概念もあいまいで、定義もしっかり統一されていない病気なのです。

因みに、日本心身医学会によると、自律神経失調症は「種々の自律神経の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義されていますが、実は日本以外ではこれに該当する病名はありません。

以上の理由から治療法も統一されておらず、人によっては何年も原因不明の不調に悩まされるというケースもあります。一人一人をよくよく観察して原因を探り、的確に対応しなければ根本的に解決しないのが自律神経失調症なのです。

自律神経失調症に整体が有効な理由

先に書きました通り、一般に自律神経失調症は体中のさまざまな箇所にいろいろな症状が現れるために、根本治療が難しいと考えられています。西洋医療では主に投薬により部分の不調に対しては的確に症状を抑えることは出来ますが、身心両面のバランスを整えて再発しない状態に導くことは不得手と言ってよいと思います。

整体はどのような症状であっても、身体の部分的な硬張り(コリ)を弛めていって姿勢を正すことには変わりありません。特に背中(背骨の両側)やお腹がやわらかくゆるんで、深い息ができることを目標に身体を整えることに努めます。横隔膜の動きと心の状態は関係が深く、呼吸が変わると頭(中枢神経)の働きが変わるのです。ですが、ただ深呼吸をすればそれで良いというものではありません。呼吸を深く「する」のではなく、柔らかくて深い息に「なる」ように身体の方を導いてやることが大切です。

一般に人が不調を訴えている時には、必ず身体(筋肉・内臓・骨など)のどこかに緊張があります。このような緊張の信号は脳へ伝わることで、「いま身体は何らかの〈仕事〉をしている」と脳が誤認します。そうしますと、休みたい時にも交感神経が優位となって充分な休息がとれません(不眠症などがこの典型です)。

出しそびれた感情を消化する

こういった緊張のもとには、必ず前に体験した不快情動※があります。ほとんどの場合は本人が無自覚に味わっている(潜在意識化した)不快感(いらいら、ムカムカ、ドキッ、など)の影響により、身体が硬張っているのです。日常で起きてくる喜怒哀楽の感情をただ我慢しているだけですと、体内でくすぶってやがては身心のシコリとなってしまうのです。このような人に、緊張している部位にじっと手を当てて意識が一定に静まるまで待っていると、その不快感を味わった時の情景が思い浮かんだり、その場の感情が再燃してカーッとなったり涙をこぼしたりすることもあります。

※情動・・・動悸、ふるえ、冷や汗など、体表上に現れる一時的で急激な不快の感情の動き。(「emotion」の訳語)

一般に、感情は身体上に発現することではじめて消化されていきます。具体的には、しっかり泣くことで悲しみは消えますし、思いっきり笑ってしまった後ではもう可笑しくありません。こうした感情の発現が闊達に行われることが健康生活の基本となりますが、実生活の場ではそうした喜怒哀楽の感情を抑えなければならないことが往々にしてあります。これにより身体が無自覚に固くなったり、また硬張ったりしてしまうのです。

病症が心を治す

当然ですが抑圧された不快情動の種類は個々の生活環境によってさまざまです。そのためにお一人お一人丁寧にお話を伺い、身体を読む(観察する)ための高い技術が求められます。身体の異常のみならず、心の生活も振り返りながら対話を重ねていくことで、自分でも知らないような感情の動きに気づくことがよくあります。身体に現れる全ての病症は、本人の知らせざる「心の涙」とも言えるのです。「自律神経失調症」もそうした不快情動を自分に知らせて健康を保つ力の現れであると言えるでしょう。

整体的な観察に基づいて言えば、「病症がそのまま治療になっている」のです。自分に起きた痛みや不快感とは闘わずに「見つめる」ことで身心のバランスを取り戻すヒントが見つかると思います。病症をなくすのではなく、症状を通じて「自分の理解を深めたい」という方には野口整体が適していると言えるでしょう。

仙腸関節の痛み

仙腸関節とは

仙腸関節とはお尻の真ん中になるハート形の骨「仙骨」とその両わきをかためる蝶々のような骨「腸骨」を連結している関節のことです。

関節といってもこの部分は強靭な靭帯でつながっているため動く幅はわずか数ミリ程度ですが、人間の健康を支える上でこのわずかな可動性が非常に重要な役割を担っています。

この仙腸関節がやわらかいと横隔膜がやわらかく上下動して呼吸が深くなりリラックスできます。逆にこの仙腸関節をつないでいる靭帯が固くこわばると腰の片側、もしくは両側ががしくしくと痛んだり、精神的にも緊張がほぐれず疲れやすくもなります。

骨盤と心理状態とのつながり

身心共にリラックスした状態のときに骨盤を触ってみると、左右の幅がふわりと開いていることがわかります。女性の場合は生理の時にきちっと骨盤が開いていることが望ましいのですが、ストレスで頭の緊張がゆるまないと仙腸関節が固くなって骨盤がスムーズに動かず生理痛や月経不順をおこしやすくなります。このように骨格の中でも特に骨盤は心理状態をよく表します。

逆に言えば整体によって仙腸関節がしっかり動くようにしておけば、心のストレスもかなりコントロールすることができます。このように体の刺激によって心をリードすることは整体の技術の中核といます。

無理なストレッチで傷めやすい仙腸関節

お身体を拝見していますと、この仙腸関節を強く伸ばそうとしたことで痛めてしまう例をときどき見受けます。

ストレッチというのは意識的動作で体を伸ばしてゆるめようとする作業ですが、先にご説明したように骨盤の可動性は無意識の影響を受けやすい所です。

例えるなら、凍ったゴムをグッ!と強く引っ張ったら割れてしまうのに似ています。そんな状態に似たことが体の上で起こってしまいます。つまり無意識の緊張があるのに頑張って伸ばそうと「ぎゅーっ!」としたとたんに「ビリ!」っとなって「イタタ!」という怪我が意外に多いのです。

何故かは「痛み」が教えてくれる

人の体は固いところを無理にひっぱったり揉んだりしてもやわらかくはなりません。「何故そうなったのか?」を心と体の両面から確かめて、根本から原因を取り除くことが大切です。

まずは椅子に座ったり、横になるなどラクな姿勢を作った上で自分の呼吸や背骨を感じてみましょう。どこかに言葉にならないモヤモヤとした感覚があれば、その気持ちに寄り添うようにしてしばらく「ぼんやり」してみると良いでしょう。痛みは必ず何かを教えてくれています。意識で命令するように「ゆるませよう」と思っても身体はなかなかいうことを聞いてくれないものです。

仙腸関節の痛みに限ったことではありませんが、大事なことはいつでも自分の身体や無意識との対話です。本当のリラックスは「意識的」に行なうことはむずかしく、むしろ何かしようとすることをやめることで身も心もゆるんできます。痛みが出たらまず身体の言い分を聴く、ということを知っておくと心の中には自分で気がつかない気持ちがたくさんあることがだんだんわかってくると思います。

バセドウ病

女性に多いバセドウ病

私がまだ開業して間もない頃、友人の紹介で見て欲しいという女性の方がいらっしゃいました(仮にAさんとします)。そのAさんのご相談の主訴が「バセドウ病で悩んでいる」ということでした。

バセドウ病は喉にある甲状腺のホルモンが過剰に作られる病気であり、甲状腺機能亢進症を伴う難病です。具体的には動悸や冷や汗、カッカするという症状に悩まされます。病院で行う治療法は投薬、手術、放射線療法のいずれかになりますが、完治は難しいというのが現代医療の見方のようです。

そのバセドウ病を整体ではどう観るかということですが、Aさんの場合はまず背中の中央が硬くなり大きく盛り上がっているのが印象的でした(ちょうどブラジャーの線の辺りです)。そこにじっと手を当てて観察していると、「・・・(強烈に)ガマンしている」という気持ちが感じられました。

仕事のストレスからバセドウ病に

少しお話を伺うと、「いま働いている職場の雰囲気があまり良くない」ということが判りました。仕事場のスタッフが2つのグループに分かれていて、比較的新しいスタッフであるAさんはそのいずれにも属さない立場で、板挟みになって働いているような状態なのだそうです。言いたいことも言えず、じっと押し黙って働いているうちに、動悸や冷や汗、顔がぽーっとするような症状に悩むようになっていったそうです。身体の様子を観ながらお話を伺いますと、心情的にもたいへんよく判る内容でした。

ですが、そのAさんは3ヶ月ほど通ううちに来院当初の動機や気が上がる感覚がだいぶ、というかほとんど無くなってしまいました。その間やったことと言えば、背中の盛り上がっている硬い箇所に手当てをして、そして毎回何十分かお話を聞いていただけです。

ただ治癒に大きく影響したと考えられるのは、時期を同じくしてAさんのご結婚が決まり寿退職されることになったということです。ようやくいい形で仕事を辞められるという安堵感に加えて、日々楽しい空想をして暮らしているうちに、身体は確実に良い方へ変わり、うす紙を剥ぐように元気になっていかれたのです。

当時まだ開業して間もなく経験も浅かったのですが、人が病気になったり治ったりする仕組みを直接的に学べた貴重な体験でした。

病症が意味するもの

その後バセドウ病のご相談を何度か受けてきましたが、皆さん一様に背中の中央部が硬いのです。ですが、当然ストレスの原因はそれぞれ全く違います。そういう心の緊張を解きほぐすことが出来れば、どんな症状でも少しずつ楽になってきます。

整体のような手技の領域においては、甲状腺という「部分・細部」の研究は西洋医療に遠く及びません。その代り、整体は心も含めたその人全体を観ます。そうすると部分だけを見ていてはわからないものに気がつくことがあるのです。

難病といってもそれは人間がそう名付けただけで、本来病気は身体のバランスを回復しようとしてなっている「生きるための力」です。ですから、病症が訴えている「心の声」を聞くことで、そこから解決のヒントが必ず見つかります。そういう観点からいえば、バセドウ病の症状もその人の全体を理解するためには、取り組みやすい病気だと思うようになりました。

ちなみにAさんは現在お子さんも授かって、お元気に生活されています。病気とは一体何のためにあるのか、後々まで深く考えされられる感慨深い出来事でした。

腰痛(慢性)

腰痛の中でも、急性のぎっくり腰は一年を通じてなりやすい時期が限られていますが、慢性的な腰痛は季節に関係なくいつでもあります。痛み方もそれぞれですし、原因もばらばらです。そうした中でも、当院なりの腰痛に対する「見方・考え方」がありますのでご説明いたします。

腰痛の原因は腰にはない?

せい氣院にご相談に来られる方の中には、以前に他の治療院(整骨院や整体院)に通われていた人もいます。そこで腰痛を診てもらうと大抵は、「この腰痛の原因は腰ではありません」と説明されるようです。それが足首だったり、膝だったり、食べ過ぎ(胃腸の疲れ)だったり、そして色々な方法で各部を調整する、という具合です。
確かに人間の身体は有機体ですから、生きていれば身体中、関係のないところはないのです。指一本動かすようなことでも、それが「目」とか「胃袋」の動きにまで影響があるのです。

ですから、世の中には「足だけを専門に整える」ような治療法(健康法)も存在しますし、頭蓋骨と骨盤の調整だけでいろいろ病気を治すようなことも可能です。一ヵ所をいじれば必ず全部が動くため、このような技術が行なえるのです。
そういう意味では、「腰痛だからといって腰そのものが原因ではない」ということも確かにその通りです。ただしそのように見立てをしたうえでも、身体各部の「つながり」を利用することで治る腰痛もありますし、それだけではスムーズに治らない腰痛も沢山あります。

何より大事なことは、「その人」を観ることです。心を含めた全体のバランスが整うように、自覚しづらい身体各部の緊張を取り除くことが大切です。「腰痛」だからといってどこかに固定的な原因があるとは決めつけずに、「この人の腰はなぜ痛むのか?」を、大局的に捉えて新たな気持ちで観察していくことが肝要です。

腰痛は本当に「怒り」なのか

『腰痛は怒りである』という本がありますが、近年は身体の痛みと感情活動の関係について科学的医療の分野でも注目をされるようになりました。腰痛のみならず身体上に現れた痛みや疾患において、「心」が関係していないものは一つもありません。こう言うと、「えっ」とおどろかれる方がいらっしゃるかもしれませんが、日々色々な方の「生きた」体験をもとに身体を観ていますと、こういう見方の方がよほど自然だと思えるのです。

ただし、「怒っているから腰が痛い」のかというと、私が感じ、観ている身体観とは少し違います。怒ったものを「抑えて」いたり、怒りの感情があるにもかかわらず「本人に自覚がない」と、身体が偏って、やがて腰が痛くなることがあるのです。ですから、腰痛とは「自身の不快感を充分に自覚できていない人」が起こす故障であると考えています。

どうすれば良くなるのか

先に書きましたように、「腰の痛み」は感じていても、自分自身の不快情動に対してほとんど(ときにまったく)自覚のな方は存外に多いのです。ですから当院のやり方では、まず自分の心(感情)に気がつくように、身体の緊張している箇所に触れながら、よくお話を伺うようにしています。職場や家庭環境などでイライラしたことや、驚いたこと、不安になったことがなかったかを丁寧に振り返って見ていくことが治癒の始まりです。私はこれを「感じ直し(治し)」の作業と読んでいます。

怒りや不安、悲しみ、焦りのような感情がそれに見合った行動で発散されていれば、身体は偏りません。つまり泣いたり笑ったり、怒ったり、ということが身体上に活き活きと現れていれば、それは後々の身心にシコリを残さないのです。
ですが、社会(集団)生活を送る人間にとって、そのように感情に直結した行動がいつも円滑に行われるとは限りません。そのために、こうして時おり自分自身の心の生活を振り返って、点検する場を設けることが健全な身心を保つうえで重要な意味を持つと考えています。

身体感覚の向上

身体はもともと、「どう動けばいいのか」を知っています。さらには「自分がどう生きればいいのか」までも、「感じて」判っているのです。ですが、現代人の多くは、頭(理性)が高度に発達したためにこの身体を「感じる力」が極端に弱まっているのです。一般的な治療法というのは、そのように鈍った身体感覚の方は取り合わずに、とにかく痛みが消えるための方法だけを探して適用するものがほとんどです。

心の偏りを直さずに、体の形だけを外から「整えた」だけでは保てないのです。治療院などで上手い施術を受けても、時間とともにまた同じような偏り疲労を起こして、腰痛が再発してしまうケースが多いのはそのためです。
これに対し整体指導では、身体を痛めたり、自ら壊すような使い方を改められるように身体感覚を磨くことを専一に行っていきます。身体の感覚が発達、成長することで自分が何をどう感じているか(感情的体験)もよく判るようになるからです。

このように同じ腰痛患者といってもそれぞれ全く異なるレベルにある「身体感覚」を、個別に観ていくことで、自分自身の「どこに問題があって」、「どうすれば解消できるのか」をその都度考える、というのが当院の一貫したスタンスです。一回で劇的に痛みが消えるような方法ではありませんが、自分自身の身心をしっかりコントロールできるように堅実に取り組みたい方に適したやり方であると思っています。

肩こりと整体

揉んでも治りません

街を歩いているとチェーン型のマッサージ店の看板をよく目にします。それだけ「コリを揉んで癒されたい」人が増えているのだと思います。肩がこっているときにマッサージをしてもらうとやはり気持ちがいいものです。ですが「揉む」だけでは気持ちがいいだけで「肩こりになる体質」が変わるわけではありません

また、確かに「物」だったら固いものでも揉んだりこねたりすれば柔らかくもなるのですが、人間の身体というのは物と同じ様にはいかないのです。肩こりをいくら揉んでも、その時だけ、なんとなく柔らいだ様にはなりますが、根本的には変わっていかないのです。それどころか、「揉み返し」という言葉の通り、翌日以降に痛みが酷くなったり、ときには腕が挙がらなくなったりすることもあります。

肩こりは意外に複雑なもの

「肩こり」自体はとても日常的なものですが、その原因を丁寧に見ていくと個人個人全く違うことがわかります。現代的には、「目の使い過ぎ」の割合は多いです。それに食べ過ぎても肩はコリますし、イライラしていても肩がコリます。当然ですが原因がちがいますから、同じ方法では対応しきれません。ですからこういった疲労の原因となる「使い方が正される」ことで、はじめて根本的によくなる可能性が出てくると言えます。

整体では、一つ一つの原因を正すというよりは、とにかく「どうすれば全体がゆるむか」ということを考えます。特に当院の整体ではその人の心の緊張のもとを取り除くことを大切にしています。少し冗談みたいな話ですが、「怒ればコル、許せばユルむ」という言葉があります通り、心のあり様というのは即、身体には如実に現れます。逆にこうした心の処置をいっさい取らずに、身体だけ調子を整えよう思っても無理があるのです。

必要以上に食べ過ぎてしまうのも、やはり最初に不快を味わったことがきっかけで、頭が絶えずそのことを考えてしまうことから起こります。こういう時は頭に上がった血を下げようと思って(そうとは知らずに)、食べています。ですがそのイライラした瞬間の情動を忘れていることもよくありますから、頭はいぜんとして緊張が続いていますし、そこに内臓疲労が重なってさらに治りにくいのです。

侮れない肩のこり

肩こりは個人個人、度合いの差が非常にあります。軽度のものはさっと柔らかくなりますが、多年にわたって岩盤のように固くなった肩は、半年、一年とかけて身体の癖がとれてくるとだんだんと柔らかくなります。時間の長短はありますけど、整体を続けていくとやがてはみんなゆるんで重心が下に降りてきます。マッサージや薬のような刺戟は、同じことを繰り返すと耐性が出来て「効かなく」なってくるのですが、整体の気の手当てはやればやるほど効くようになってきます。続けることでゆるみやすい身体を育てていると言えます。

慢性的な重い肩こりの人の中には、コリを自覚していない方が多いのも特徴です。本人は「一度も肩こりになったことがない」と思っていても、実際に触ってみるととても冷たく固い人がいます。これは身体の感覚がだいぶ鈍っていますから、やはり自然治癒力が働かないためよくならないのです。

身体は「異常感」を自分で気づいた時から治り始めるようにできています。そのためにも痛みやコリに早く気がつく「敏感な体を保つ」ということが身心ともに柔らかさを保つ秘訣です。先ずは身体に触れながら、どこがどのように固いのか、を細やかに確認してみましょう。身体というのは今の自分の気持ちをよく現していますから、楽になるヒントをきっと教えてくれるはずです。

腰痛(急性・ぎっくり腰)

ぎっくり腰は何故なるのか

ぎっくり腰というのはなったことのある方にしかその辛さがわかりません。ある日突然、ある動作をきっかけにまったく身動きが取れなくなるのです。先ず立って歩けない、坐っていても辛い、そーっと寝っ転がっている時だけ、かろうじて痛くない格好がある。酷いものになると、だいたいこのような状況になっています。

西洋では「魔女の一刺し」と言われるそうです。「何故そうなったのか?」がわからないと、不幸にも突然降って沸いたように、激痛が走ったようにしか見えないのですね。もちろん身体は理由もなく壊れるようなことはありませんから、痛む時には必ず痛む原因があるのです。

経験的には引っ越しの直後とか産後とか、何か心理的なショックを受けてから半月~1ヶ月以内にぎっくり腰はなることが多いです。あと若い時にスポーツをやっていた男性が、何気ない動作(くつを履く時など)でなることもよくあります。

いずれにしても、ぎっくり腰は、腰の筋肉の疲労が臨界点を越したことを意味しています。

休養をしつつ温める

ですから、まず鋭い痛みが走ったら何を置いても今すぐに「休む」ことです。ごろごろ寝転がっている時間が長ければそれだけ早く動けるようになります。だいたい一週間から長くても二週間もすれば楽になります。ところが二週間以上たっても、一向に良くならない人がいます。今までの経験上、こういう方の多くは(ほぼ男性でしたが)、何かご自分で勝手に「リハビリ」をやっています。「早く良くしよう」として、スクワットや腹筋、ストレッチなどをしていると、なかなか疲労が抜けきらないので治らないのです。だからまず「とことん休む」ということが一番大切です。

時々「ぎっくり腰は温めるのか、冷やすのか」ということを聞かれますが、これは温めた方が良いようです(経験則です)。ですがその「温め方」が大事です。どうすればいいかというと「蒸しタオル」をおすすめします。昔は炊き立てのごはんを、木綿の布でくるんで患部に当てる、という民間療法があったそうです。

共通することは「湿度のある熱めの温度」で「短時間刺激」することです。何故かはわからないのですが、湿度を伴った温度の方が、筋肉がよくゆるむのです。ですから、熱めの蒸しタオルをしぼって痛いところに当ててみてください(これだけでもかなり気持ちよく、経過がよくなります)。一回5、6分でけっこうですので、間隔を8時間以上あけながら痛みが引くまでこれを繰り返します。なおわきばらが固くなっていることもありますので、その場合はおへその高さの両わきに蒸しタオルを当てることも有効です。

整体ではどうするのか

開業したばかりの頃は、「ぎっくり腰なんですが‥」と聞いたらすぐに来てもらいました。ですがぎっくり腰や寝違えというのは性質的には「捻挫」に近いのです。ですから、痛みがピークの時に歩いて来ていただくのは、効果が無いばかりか、ときに症状を悪化させるのだと思うようになりました。ですから今では痛みが引くまで自宅で蒸しタオルをやってもらって、歩けるようになってから「ぎっくり腰にならない身体作り」を一緒にやっていきます。

ぎっくり腰に共通しているのは、「自覚の無い筋緊張」です。自分ではどこも疲れていない、と思っていても身心両面のストレスで微量に緊張しているのです。柔軟性を欠いた身体は、例えるならゴムが凍ってしまっているようなものです。常温ならば捻じっても引っ張ってもなんでもないものが、凍っているために、ちょっとひねった瞬間にびしっと割れてしまう、これに似た状況が身体上でも起きているのです。

先ずは、カウンセリングと気の手当て(愉気)で心と体の「緊張癖」をとっていきましょう。以前、高校生のころから2、3年おきにぎっくり腰を繰り返している方をみましたが、成育環境などもろもろの問題でからだのあちこちが硬張っていて大変でした。だいたい一年ほど通ったと思いますが、背骨を中心に身体全体が柔らかくなりましたので以来急激な痛みに怯える必要はほとんどなくなったのです。

まとめとしては、急性・一過性の痛みには上で紹介したような熱刺戟を用いますが、長期的には体質改善が必要です。痛みがある時も、ない時も「自分が今ムリをしていないか?」をよく見てみることが大切です。

仙腸関節痛

仙腸関節とは

仙腸関節とはお尻の真ん中になるハート形の骨「仙骨」とその両わきをかためる蝶々のような骨「腸骨」を連結している関節のことです。

関節といってもこの部分は強靭な靭帯でつながっているため動く幅はわずか数ミリ程度ですが、人間の健康を支える上でこのわずかな可動性が非常に重要なポジションを占めています。

この仙腸関節がやわらかいと横隔膜がやわらかく上下動して呼吸が深くなりリラックスできます。逆にこの仙腸関節をつないでいる靭帯が固くこわばると腰の片側、もしくは両側ががしくしくと痛んだり、精神的にも緊張がほぐれず疲れやすくもなります。

骨盤と心理状態とのつながり

身心共にリラックスした状態のときに骨盤を触ってみると、左右の幅がふわりと開いていることがわかります。女性の場合は生理の時にきちっと骨盤が開いていることが望ましいのですが、ストレスで頭に緊張があると仙腸関節が固くなって骨盤がスムーズに動かず生理痛や月経不順をおこしやすくなります。このように骨格の中でも特に骨盤は心理状態をよく表します。

逆に言えば整体によって仙腸関節がしっかり動くようにしておけば、心のストレスもかなりコントロールすることができます。このように体の刺激によって心をリードすることは整体で大変重要視する技術です。

無理なストレッチで傷めやすい仙腸関節

お体を拝見していますと、この仙腸関節を強くストレッチしたことで痛めてしまう例をときどき見受けます。

ストレッチというのは意識的動作で体を伸ばしてゆるめようとする作業ですが、先にご説明したように骨盤の可動性は無意識の影響を受けやすい所です。

例えるとゴムが凍った状態のときに、グッ!と引っ張ったら割れてしまった。そんな状態に似たことが体の上で起こってしまいます。つまり無意識の緊張があるのに伸ばそう伸ばそうとしてぎゅーっとしたらピリ!っとなって「イタタ!」という怪我が意外に多いのです。

人の体は固いところを無理にひっぱったり揉んだりしてもやわらかくはなりません。「なぜそうなったのか?」を心と体の両面から確かめて、根本から原因を取り除くことが大切です。

生理痛

生理は自然のバランス回復機能

整体を受ける方の男女比は圧倒的に女性の方が多いようです。これは当院に限ったことではないと思うのですが、男の人は少々の痛みくらいなら我慢して仕事をしている方が多いのかもしれません。症状が進行して、ようやく重い腰を上げる頃にやっと西洋医療のお世話になるのが一般的なようです。

これに対して女性の場合はというと、身体の小さな異常感に対しては男性よりもずっと敏感です。自分自身の「妙」な状態、「違和感」というものを放っておけないのです。それだけ身体の「自然」とか「野生」というものが保たれる構造をしているのだろうと思います。その端的なはたらきの一つが「生理」です。統計的にいって女性の方が長生きするのも、この生理でバランスをとる力があるからだと思います。

生理を簡単に言うと約4週の周期で骨盤がゆるんでひらき、やがて引き締まる一連の動きです。生理痛はこのゆるみが自然に行われない時に痛みます。では、「原因は」と問われると、これはもう十人十色、千差万別なので「これだ」とは言い切れません。ただ普通は、「痛いことが問題(悪いこと)」と考えられがちですが、痛みも身体の回復要求です。痛みによってそこに気が集まり、身心が正常に戻ろうとしているのだ、と考えるのが整体の特色です。だからと言って放っておけば良いとは言えませんが、野口整体をやって丈夫になろうという時にはまず初めにこの視点の転換が大切です。

生理痛の解消方法

具体的に整体で生理痛の問題はどうするのかというと、必ず求められるのは「腰の改善」です。いろんな身体のトラブルの大本はみんな、最終的に「腰が固い」ということに通じます。もうすこし厳密にいうと、骨盤のなかの「仙腸関節」という部分が縮んでこわ張っていると頭痛になったり肩こりになったり、全体の調子を乱しやすくなります。ですからここに動きを付けてやると一応は良いのです。

ただ整体ではこれを物理的に行うのではありません。先ほど書きましたように身体には、固くなったり、硬張ったりする「原因」がありますので、これを個別の観察によって見つけることが求められます。どんな人でも楽しく生活していれば身体が固くなるということはありませんから、どこかで感じている不快感を意識化して、適切な体運動(野口整体の場合は活元運動)によってこれを消化していくことが大切です。

人が身体の痛みと向き合う時には、自身の人生に対する思わぬ気づきになることがよくあります。野口整体で「病症が心を治す」、といわれる理由はここにあります。「この痛みは何を伝えようとしているのか?」一度足を止めて、自分の身体にしっかり取り組んでみると、生理痛といえども自分が変わるきっかけになるかもしれません。

自律神経失調症

自律神経とは

自律神経(系)とは内臓や体の各器官(目や耳や口など)の働きを自動的に調整してくれる神経です。「交感神経」と「副交感神経」に大別され、「緊張」と「弛緩」という反対の作用が交互に働くことで身心全体のバランスを取っています。

具体的には昼間活動するときには交感神経が主動となり、夜眠る時には副交感神経主動になります。この2つの神経が交互に切り替わって働いている状態を一般的には健康体と考えています。

必要な時にはしっかり緊張し、休む時には深くリラックスできることは、健康生活を保つ上でもっとも大切な機能です。私たちが何もしなくても、心臓が動きつづけたり、食べたものを消化したり、体温を一定に保ったりできるのは、全てこの自律神経が正常に働いているおかげと言えます。

逆に自律神経の働きが変調をきたすことで、身心にいろいろな異常が起こりうるのです。そのようにして現れる症状を総じて「自律神経失調症」と言っています。

自律神経失調症とは

自律神経失調症はよく耳にする病名でありながら、その具体的な症状や対処法などはあまり正確に認知されていません。「何となく身体の調子がわるい」と思っていても、しばらくそのままにしてしまうとか、病院に行ったとしても「特に異常は見つかりません」と言われて、その後どこに相談したらいいか判らないということもあります。

また原因が解らないことで余計に不安になったり、病名(診断名)が付かないために周囲の人にも自分の大変さが理解されず、そのストレスで症状がさらに悪化する、ということもあるようです。このような悩みを持つ人の中に「自律神経失調症」と考えられる方が多くいらっしゃいます。

例えば、自律神経失調症の主な症状には次のようなものが上げられます。

身体面の症状

夜ぐっすり眠れない、朝起きると心臓がドキドキする(動悸)、おでこが熱い(ほてり)、いつも疲れている、だるい、胃の不快感、吐き気、肩こりがひどく治らない、腰痛、慢性的な下痢や便秘、手足がしびれる(またはビクッとなる)、冷や汗・あぶら汗が出る、過呼吸、生理不順・・・など

精神面の症状

理由なく気分が落ちる(鬱的気分)、何もしていない時に昂揚(興奮・カッカ)する、孤独に感じる、気持ちのアップダウンが激しい、何かに追い立てられるように焦ってしまう、原因不明の不安感・・・など

こうしてみますと、何か身体に異常をきたしたらみんな「自律神経失調症」と言えそうなくらいです。それもそのはずで、実は自律神経失調症はその概念もあいまいで、定義もしっかり統一されていない病気なのです。また日本以外にはこれに該当する病名はありません。ですから対処法も統一されておらず、人によっては何年も原因不明の不調に悩まされるというケースもあります。一人一人をよく観察して原因を探り、的確に対応しなければ根本的に解決しないのが自律神経失調症なのです。

自律神経失調症と整体

先に書きました通り、一般に自律神経失調症は体中のさまざまな箇所にいろいろな症状が現れるために、根本治療が難しいと考えられています。西洋医療では主に投薬により部分の不調に対しては的確に症状を抑えることは出来ますが、身心両面のバランスを整えて再発しない状態に導くことは不得手と言ってよいと思います。

整体はどのような症状であっても、身体の部分的な硬張り(コリ)を弛めていって姿勢を正すことには変わりありません。特に背中(背骨の両側)やお腹がやわらかくゆるんで、深い息ができることを目標に身体を整えることに努めます。横隔膜の動きと心の状態は関係が深く、呼吸が変わると頭(中枢神経)の働きが変わるのです。ですが、ただ深呼吸をすればそれで良いというものではありません。呼吸を深く「する」のではなく、柔らかくて深い息に「なる」ように身心を導いていくことが大切です。

一般に人が不調を訴えている時には、必ず身体(筋肉・内臓・骨など)のどこかに緊張があります。このような緊張の信号は脳へ伝わることで、「いま身体は何らかの〈仕事〉をしている」と脳が誤認します。そうしますと、休みたい時にも交感神経が優位となって充分な休息がとれません(不眠症などがこの典型です)。

こういった緊張のもとには、必ず前に体験した不快情動※があります。ほとんどの場合は本人が無自覚に味わっている(潜在意識化した)不快感(いらいら、ムカムカ、ドキッ、など)の影響により、身体が硬張っているのです。日常で起きてくる喜怒哀楽の感情をただ我慢しているだけですと、体内でくすぶってやがては身心のシコリとなってしまうのです。このような人に、緊張している部位にじっと手を当てて意識が一定に静まるまで待っていると、その不快感を味わった時の情景が思い浮かんだり、その場の感情が再燃してカーッとなったり涙をこぼしたりすることもあります。

※情動・・・動悸、ふるえ、冷や汗など、体表上に現れる一時的で急激な不快の感情の動き。(「emotion」の訳語)

一般に、感情は身体上に発現することではじめて消化されていきます。具体的には、しっかり泣くことで悲しみは消えますし、思いっきり笑ってしまった後ではもう可笑しくありません。こうした感情の発現が闊達に行われることが健康生活の基本となりますが、実生活の場ではそうした喜怒哀楽の感情を抑えなければならないことが往々にしてあります。これにより身体が無自覚に固くなったり、また硬張ったりしてしまうのです。

当然ですが抑圧された不快情動の種類は個々の生活環境によってさまざまです。そのためにお一人お一人丁寧にお話を伺い、身体を読む(観察する)ための高い技術が求められます。身体の異常のみならず、心の生活も振り返りながら対話を重ねていくことで、自分でも知らないような感情の動きに気づくことがよくあります。身体に現れる全ての病症は、本人の知らせざる「心の涙」とも言えるのです。「自律神経失調症」もそうした不快情動を自分に知らせて健康を保つ力の現れであると言えるでしょう。

整体的な観察に基づいて言えば、病症はそのまま治癒なのです。自分に起きた痛みや不快感は闘わずに「見つめる」ことで身心のバランスを取り戻すヒントが見つかると思います。病症をなくすのではなく、症状を通じて「自分の理解を深めたい」という方には野口整体が適していると言えるでしょう。

腰痛(急性・ぎっくり腰)

ぎっくり腰は何故なるのか

ぎっくり腰というのはなったことのある方にしかその辛さがわかりません。ある日突然、ある動作をきっかけにまったく身動きが取れなくなるのです。先ず立って歩けない、坐っていても辛い、そーっと寝っ転がっている時だけ、かろうじて痛くない格好がある。酷いものになると、だいたいこのような状況になっています。

西洋では「魔女の一刺し」と言われるそうです。「何故そうなったのか?」がわからないと、不幸にも突然降って沸いたように、激痛が走ったようにしか見えないのですね。もちろん身体は理由もなく壊れるようなことはありませんから、痛む時には必ず痛む原因があるのです。

経験的には引っ越しの直後とか産後とか、何か心理的なショックを受けてから半月~1ヶ月以内にぎっくり腰はなることが多いです。あと若い時にスポーツをやっていた男性が、何気ない動作(くつを履く時など)でなることもよくあります。

いずれにしても、ぎっくり腰は、腰の筋肉の疲労が臨界点を越したことを意味しています。

休養をしつつ温める

ですから、まず鋭い痛みが走ったら何を置いても今すぐに「休む」ことです。ごろごろ寝転がっている時間が長ければそれだけ早く動けるようになります。だいたい一週間から長くても二週間もすれば楽になります。ところが二週間以上たっても、一向に良くならない人がいます。今までの経験上、こういう方の多くは(ほぼ男性でしたが)、何かご自分で勝手に「リハビリ」をやっています。「早く良くしよう」として、スクワットや腹筋、ストレッチなどをしていると、なかなか疲労が抜けきらないので治らないのです。だからまず「とことん休む」ということが一番大切です。

時々「ぎっくり腰は温めるのか、冷やすのか」ということを聞かれますが、これは温めた方が良いようです(経験則です)。ですがその「温め方」が大事です。どうすればいいかというと「蒸しタオル」をおすすめします。昔は炊き立てのごはんを、木綿の布でくるんで患部に当てる、という民間療法があったそうです。

共通することは「湿度のある熱めの温度」で「短時間刺激」することです。何故かはわからないのですが、湿度を伴った温度の方が、筋肉がよくゆるむのです。ですから、熱めの蒸しタオルをしぼって痛いところに当ててみてください(これだけでもかなり気持ちよく、経過がよくなります)。一回5、6分でけっこうですので、間隔を8時間以上あけながら痛みが引くまでこれを繰り返します。なおわきばらが固くなっていることもありますので、その場合はおへその高さの両わきに蒸しタオルを当てることも有効です。

整体ではどうするのか

開業したばかりの頃は、「ぎっくり腰なんですが‥」と聞いたらすぐに来てもらいました。ですがぎっくり腰や寝違えというのは性質的には「捻挫」に近いのです。ですから、痛みがピークの時に歩いて来ていただくのは、効果が無いばかりか、ときに症状を悪化させるのだと思うようになりました。ですから今では痛みが引くまで自宅で蒸しタオルをやってもらって、歩けるようになってから「ぎっくり腰にならない身体作り」を一緒にやっていきます。

ぎっくり腰に共通しているのは、「自覚の無い筋緊張」です。自分ではどこも疲れていない、と思っていても身心両面のストレスで微量に緊張しているのです。柔軟性を欠いた身体は、例えるならゴムが凍ってしまっているようなものです。常温ならば捻じっても引っ張ってもなんでもないものが、凍っているために、ちょっとひねった瞬間にびしっと割れてしまう、これに似た状況が身体上でも起きているのです。

先ずは、カウンセリングと気の手当て(愉気)で心と体の「緊張癖」をとっていきましょう。以前、高校生のころから2、3年おきにぎっくり腰を繰り返している方をみましたが、成育環境などもろもろの問題でからだのあちこちが硬張っていて大変でした。だいたい一年ほど通ったと思いますが、背骨を中心に身体全体が柔らかくなりましたので以来急激な痛みに怯える必要はほとんどなくなったのです。

まとめとしては、急性・一過性の痛みには上で紹介したような熱刺戟を用いますが、長期的には体質改善が必要です。痛みがある時も、ない時も「自分が今ムリをしていないか?」をよく見てみることが大切です。

腰痛(慢性)

腰痛の中でも、ぎっくり腰は一年を通じてなりやすい時期が限られていますが、慢性的な腰痛は季節に関係なくいつでもあります。痛み方もそれぞれですし、原因もばらばらです。そうした中でも、当院なりの腰痛に対する「見方・考え方」がありますのでご説明いたします。

腰痛の原因は腰にはない?

せい氣院にご相談に来られる方の中には、以前に他の治療院に通われていた人もいます。そこで腰痛を診てもらうと大抵は、「この腰痛の原因は腰ではありません」と説明されるようです。それが足首だったり、膝だったり、食べ過ぎ(胃腸の疲れ)だったり、そして色々な方法で各部を調整する、という具合です。
確かに人間の身体は有機体ですから、生きていれば身体中、関係のないところはありません。指一本動かすようなことでも、それが「目」とか「胃袋」の動きにも影響があるのです。

ですから、「足だけを整える」ような治療法(健康法)も存在しますし、頭蓋骨と骨盤の調整だけでいろいろ病気を治すようなことも可能となります。一ヵ所をいじれば必ず全部が動くため、このような技術も可能である言えます。
そういう意味では、「腰痛だからといって腰そのものが原因ではない」ということも確かにその通りです。ただしその様に見立てをしたうえでも、身体各部の「つながり」を利用することで治る腰痛もありますし、それだけではスムーズに治らないことも沢山あります。

とにかく全体のバランスが整うように、自覚しづらい身体各部の緊張を取り除くことが大切です。「腰痛」だからといってどこかに固定的な原因があるとは決めつけずに、「この人の腰はなぜ痛むのか?」を、大局的に捉えて個別に観察していくことが大切です。

腰痛は本当に「怒り」なのか

『腰痛は怒りである』という本がありますが、近年は身体の痛みと感情活動の関係について科学的医療の分野でも注目をされるようになりました。腰痛のみならず身体上に現れた痛みや疾患において、「心」が関係していないものは一つもありません。こう言うと、「えっ」とおどろかれる方がいらっしゃるかもしれませんが、日々色々な方の「生きた」体験をもとに身体を観ていますと、こういう見方の方が自然だと思えるのです。

ただし、「怒っているから腰が痛い」のかというと、私が感じ、観ている身体観とは少し違います。怒ったものを「抑えて」いたり、怒った情動があったのにそれに対して「本人の自覚がない」と、身体が偏って、やがて腰が痛くなることがあるのです。ですから、腰痛とは「自身の不快感を充分に自覚できていない人」が起こす身心相即的な故障であると考えています。

どうすれば良くなるのか

先に書きましたように、「腰の痛み」は感じていても、自分自身の不快情動に対してほとんど(ときにまったく)自覚のな方は存外に多いのです。ですから当院のやり方では、まず自分の心(感情)に気がつくように、身体の緊張している箇所に触れながら、よくお話を伺うようにしています。職場や家庭環境などでイライラしたことや、驚いたこと、不安になったことがなかったかを丁寧に振り返って見ていくことが治癒の始まりです。私はこれを「感じ直し(治し)」の作業と読んでいます。

怒りや不安、悲しみ、焦りのような感情がそれに見合った行動で発散されていれば、身体は偏りません。つまり泣いたり笑ったり、怒ったり、ということが身体上に活き活きと現れていれば、それは後々の身心にシコリを残さないのです。
ですが、社会(集団)生活を送る人間にとって、そのように感情に直結した行動がいつも円滑に行われるとは限りません。そのために、こうして時おり自分自身の心の生活を振り返って、点検する場を設けることが健全な身心を保つうえで重要な意味を持つと考えています。

身体感覚の向上

身体はもともと、「どう動けばいいのか」を知っています。さらには「自分がどう生きればいいのか」までも、「感じて」判っているのです。ですが、現代人の多くは、頭(理性)が高度に発達したためにこの身体を「感じる力」が極端に弱まっているのです。一般的な治療法というのは、そのように鈍った身体感覚の方は取り合わずに、とにかく痛みが消えるための方法だけを探して適用するものがほとんどです。

心の偏りを直さずに、体の形だけを外から「整えた」ものは保てないのです。治療院などで上手い施術を受けても、時間とともにまた同じような偏り疲労を起こして、腰痛が再発してしまうケースが多いのはそのためです。
これに対し整体指導では、身体を痛めたり、自ら壊すような使い方を改められるように身体感覚を磨くことを専一に行っていきます。身体の感覚が発達、成長することで自分が何をどう感じているか(感情的体験)もよく判るようになるからです。

このように同じ腰痛患者といってもそれぞれ全く異なるレベルにある「身体感覚」を、個別に観ていくことで、自分自身の「どこに問題があって」、「どうすれば解消できるのか」をその都度考える、というのが当院の一貫したスタンスです。一回で劇的に痛みが消えるような方法ではありませんが、自分自身の身心をしっかりコントロールできるように堅実に取り組みたい方に適したやり方であると思っています。

肩こり

街を歩いているとチェーン型のマッサージ店の看板をよく目にします。それだけ「コリを揉んで癒されたい」人が増えているのだと思います。肩がこっているときにマッサージをしてもらうとやはり気持ちがいいものです。ですが「揉む」だけでは気持ちがいいだけで「肩こりになる体質」が変わるわけではありません。

また、確かに「物」だったら固いものでも揉んだりこねたりすれば柔らかくもなるのですが、人間の身体というのは物と同じ様にはいかないのです。肩こりをいくら揉んでも、その時だけ、なんとなく柔らいだ様にはなりますが、根本的には変わっていかないのです。それどころか、「揉み返し」という言葉の通り、翌日以降に痛みが酷くなったり、ときには腕が挙がらなくなったりすることもあります。

「肩こり」自体はとても日常的なものですが、その原因を丁寧に見ていくと個人個人全く違うことがわかります。現代的には、「目の使い過ぎ」の割合は多いです。それに食べ過ぎても肩はコリますし、イライラしていても肩がコリます。当然ですが原因がちがいますから、同じ方法では対応しきれません。ですからこういった疲労の原因となる「使い方が正される」ことで、はじめて根本的によくなる可能性が出てくると言えます。

整体では、一つ一つの原因を正すというよりは、とにかく「どうすれば全体がゆるむか」ということを考えます。特に当院の整体ではその人の心の緊張のもとを取り除くことを大切にしています。少し冗談みたいな話ですが、「怒ればコル、許せばユルむ」という言葉があります通り、心のあり様というのは即、身体には如実に現れます。逆にこうした心の処置をいっさい取らずに、身体だけ調子を整えよう思っても無理があるのです。

必要以上に食べ過ぎてしまうのも、やはり最初に不快を味わったことがきっかけで、頭が絶えずそのことを考えてしまうことから起こります。こういう時は頭に上がった血を下げようと思って(そうとは知らずに)、食べています。ですがそのイライラした瞬間の情動を忘れていることもよくありますから、頭はいぜんとして緊張が続いていますし、そこに内臓疲労が重なってさらに治りにくいのです。

肩こりは個人個人、度合いの差が非常にあります。軽度のものはさっと柔らかくなりますが、多年にわたって岩盤のように固くなった肩は、半年、一年とかけて身体の癖がとれてくるとだんだんと柔らかくなります。時間の長短はありますけど、整体を続けていくとやがてはみんなゆるんで重心が下に降りてきます。マッサージや薬のような刺戟は、同じことを繰り返すと耐性が出来て「効かなく」なってくるのですが、整体の気はやればやるほど効くようになってきます。続けることでゆるみやすい身体を育てていると言えます。

慢性的な重い肩こりの人の中には、コリを自覚していない方が多いのも特徴です。本人は「一度も肩こりになったことがない」と思っていても、実際に触ってみるととても冷たくて固い人がいます。これは身体の感覚がだいぶ鈍っていますから、やはり自然治癒力が働かずによくならないのです。

身体は「異常感」を自分で気づいた時から治り始めるようにできています。そのためにも痛みやコリに早く気がつく「敏感な体を保つ」ということが身心ともに柔らかさを保つ秘訣です。先ずは身体に触れながら、どこがどのように固いのか、を細やかに確認してみましょう。身体というのは今の自分の気持ちをよく現していますから、楽になるヒントをきっと教えてくれるはずです。