正座の効用 日本人の身体性
整体法では正座が基本となります。慣れていないと膝や足首が痛くなるので敬遠されがちですが、身体が整っていると肩の力が抜けて呼吸のしやすい座り方となります。当院では指導を通じて正しい正座を身につけていただくことが、一つの目的となっております。
日本人の身体性の変化
一人一人の体を見ていくとそれぞれに違う個性があるというのがわかりますが、大きく見ると日本人特有の体のモデルが浮かんできます。
特に戦後、経済的な問題の早期解決を第一目標として知識偏重教育に移行し、現代に至るまでほとんどが身体教育や躾が行われていないのが現状です。
心と体が一体だという感覚は元来日本(東洋思想)では当然にあったものでしたが、自己と対象の間に境界を引いて科学的に発展してきた西洋文化の流入により身体性が失われ、中途半端に理性が育っているというのが現時点での日本人の身体性です。
肩と下半身の関係
首や肩のこりの原因は沢山ありますが、肩こりと一緒に起こる頭痛などの原因が首から下の筋肉の緊張にみられることがあります。
人は背骨という一本の軸を基礎として立っていますので、首の疲れの原因が、背中や腰骨の状態から影響が上がってきていることがあります。正座は骨盤を正しく固定する力がありますので、これをきちんと行うことで土台となる腰・骨盤が安定し、まっすぐな腰骨の上に背中や首が安定し、余分な緊張が抜けて結果的に上半身の違和感が解消されます。
腿の裏側と息の関係
整体では身体の弾力と同時に呼吸の深さを大切にします。
正座に慣れてくると自然と上半身がまっすぐになり息がたくさん入ってきます。
「息」は自分の心と書きますが、息がたくさん入る身体はいつも心に広く余裕が持てることを意味します。
そして正座をすると腿(もも)の裏側を踵で押さえる形になります。人は緊張すると腿裏からアキレス腱にかけての筋が縮んで踵がしっかりと大地に着かない、いわゆる「浮足立った」状態になってしまいます。
整体ではこの脚の裏側の筋を押さえることで頭の緊張を抜く技術がありますが、正座は自分の踵で腿裏を押さえて頭と心をリラックスさせることができる合理的な座法と言えます。