せい氣院

野口整体とは 2

野口整体という名称は、主に昭和の時代に整体法の創始者として活躍された野口晴哉(はるちか)先生のお名前に由来します。

この野口先生による独自の生命思想を基にまとめられた技術が現在広く行われている「整体」の原型となっています。その技術理念や思想体系が皆さんの知る整体とは異なるために、これを他と区別するように一般に「野口整体」と呼ばれるようになりました。

野口整体は体の歪みを手で押したり揉んだりすることで整えるような、骨格の矯正法や治療法ではありません。また「病気を治療して健康になる」という二元対立の世界でもありません。

整体の生命観においては「病症は身体を整える働きの一つである」と捉え、健康な一生の中に病気や苦しさがあり、これを乗り越えることで潜在体力を奮うことが出来ると考えます。

つまり「治るはたらきと、こわすはたらきはどちらも一つの生きる力である」ということです。

整体という生き方は、身体に不調を感じた時にどのように対処(治療)するかということではなく、身心の勢いをいかに引き出し、自身に内在する力を使って元気よく生活することに重きをおくものです。

野口整体の本質は人間の気力や集中力の発揮を目的とした潜在体力の発揚法であると言えるでしょう。

感情と身体の関係

人間の身体には始めから命を全うしようとする力が備わっています。

健康や病菌の知識を持たない子供でも、自分の力で自然に食べ、眠り、育ち、元気に生きています。生まれたばかりの赤ちゃんでも、寒ければくしゃみをしますし、暑ければ汗をかいて体温の調節をしています。

ですがこのような身体に具わる自然の力(恒常性維持機能)は、生活の中で起こる不快な感情によって身体が偏ることで、充分発揮されなくなります。

驚いたり、怖かったり、ムッとしたり、などの負の情動が無意識的な筋肉の緊張を引き起こし、自律神経系のバランスを一時的に失わせるのです。

こうした情動によって呼吸が浅くなり、さらにそこから消極的な空想が次々と湧いてくることで、身体の秩序回復機能が弱まり病症や苦悩を乗り越える力が正常に発揮されなくなるのです。

現代では病気はもっぱら「医薬によって治すもの」と考えられていますが、本来は薬に人の元気を呼び起したり命を育む力は備わっていません。

整体の役割りは、身体を過度に守り庇おうとする考え方や技術から離れ、人間が生まれながら持っている潜在体力の自覚と発揮をうながす所にあります。

「病症を乗り越える力」と「人生を切り拓く力」は同じ一つのもの

身体に起こる不快な症状の多くは、心や体が偏り、本来の姿でないことを知らせてくれています。

つまりそれは身体の安全弁、警報(アラーム)のようなものです。その声を無視して症状だけを取り除く対症療法は、身体に備えられた自然の治癒力を歪めてしまいます。

そもそも野口整体には闘病という概念がありません。症状を治療の対象と見ず、むしろこれを潜在する余剰体力として認め、積極的に経過させることで鬱滞する身心を刺戟して刷新することを期待します。

このようにして「生きているものの生きている力を振作し、より活発な状態」にすることを奨励するものです。

何事も自らの体力によって乗り越えることで、丈夫な身体を自覚し、僅かな凝滞もない澄んだ心(天心)を保つことが大切です。

整体とはそのような「生き方」、或いは「生きる態度」を現す言葉ともいえます。

もちろん自身の生命に対する信頼を揺るぎないものにするには一定の期間を要するものですが、自身の一生を悔いなきものとするためにも先ずはこれまでの健康観を一掃し、自身に内在する「力」に気づくことが何より求められるのです。

この整体という生き方を体現すべく整体指導と活元運動を活用していただきたいと思います。