せい氣院

感情を観る

整体の目的は全身の緊張をゆるめてコリを取り除くことにあります。からだ全体がすっかり柔らかくなると、心と体のあらゆる問題が解消される方向に流れていきます。

原理はとても簡単ですが、この身心の硬直を解くことは、(個人差もありますが)なかなか容易でないことが多いものです。

身体の「凝り」は固まった感情エネルギー

身体の凝っているところや固いところを、ねん土のようにこねたり揉んだりしてもゆるまないことは、いまや多くの方の知るところでしょう。なぜなら、体の外からいくら力を加えても固くしている原因が解消されないからです。

身体のあちこちを固くしている原因の一つに、表現できなかった感情エネルギーがあります。

中でも過去に生じた不快情動が筋肉・内臓・骨格などを固まらせています。

不快情動から生じる行動欲求を頭で抑え込んでしまうと、そのことで排出しそこなった感情エネルギーが凝固して身体のあちこちをこわばらせてしまうのです。

このような理由でできあがった体のこわばりは、その鬱滞した感情エネルギーが解放されるまでいつまでたってもなくなりません(風邪の発熱などにはこうしたこわばりをゆるませる働きがあります)。

感情の解放にはさまざまな方法がありますが、当院の場合は整体とカウンセリングによって不快感を消化できるように援助します。

これらの方法で一時的にでも頭の働きが休まることで、体は本来のあるべき位置に帰る動きが起こってきます。

「プラス思考」は本当にプラスを生むか

人間の身体を動かすものは感情です。思考ではありません。

悲しい時に泣いたり、可笑しい時に笑うと、身体は自然にゆるんでいきます。

これは感情と身体が調和して動いているからで、逆にいやな気持ちを抑えて泣かないでいると、抑圧されたエネルギーが凝固して身体のどこかが硬くなります。

だからと言って肩のこった人がゆるもうと思って、無理やり「泣こう!」と考えても涙は出ません。こんな風に「考えたこと」は身体の生理機能に対して作用する力は弱いものです。

少し前に「プラス思考」というものが流行りました。「何ごともプラスに捉えて、嫌な考えをは頭の中から締め出してしまいましょう」というものです。

身心に不調を抱える人の中には、努めてこのような心がけをしてきた方を度々拝見してきました。

確かに、この「プラスに考えよう」という姿勢はある面では良い効果が見受けられます。その一方で、「思考」に頼りすぎたことで、自分の「感じ」たことが解らなくなっている人がいるのもまた事実です。

こういう方は、まるで「思考」によって「感情」が塗り固められ隠れてしまったかのようです。

さらに、実際はいくら「プラスに考え」たところで、最初に味わった「マイナスの感情」はずっと消えずに身体に残ったままなのです。

先に書いたように、身体には出しそこなった感情がコリや偏り(歪み)という形で残っています。

感情の気づきによってゆるむ

整体指導の場では、こういった「くやしい、悲しい、イライラ」などの跡を身体上に見つけて「こういう気持ちになりませんでしたか?」というように水を向けると、「ああそういえばそうだった・・」と気付かれる方がいます(実際はこのように簡単にいかないことが多いのですが…)。

このように感情に気づくとそこから体が変わって運動が出やすくなります。

「生きている」間は喜怒哀楽だけでなく、あらゆる感情、情動が絶えず浮かんでは消えて行きます。

ですから嫌なことがあっても涼しい顔をしたりして装ったりすることなく、「嫌だ」とそのままを認め、我慢することなく周りと付き合っていくことで、プラスもマイナスも超えたところで過ごすことができます。

どんな感情であってもただ受け入れることができたら、不快に感じたとしても物事に振り回されることはないでしょう。

そして「何が問題なのか」起こったことの本質を見つめる目を養うことにつながっていくのではないでしょうか。

「本当のプラス思考」とはこのような態度ではないかと私は思っています。

感情を発散させる方法

自分の身の上に起きた感情に気が付いたら、あとは自然に発散させてあげるだけです。方法はどんなやり方でもいいでしょう。

一般的なのは歩く、走るなどの「移動をともなう運動」や、TVや映画などを観て泣いたり笑ったりするのも有効です。またカラオケのようなもので大きな声を出すことも、横隔膜を起点として身体をゆるめてくれます。

少しはげしい方法として、「お皿を割る」なんていうのもあります。自分で意識してやるのと、無意識にそうしてしまうのとありますが、いずれにしてもガチャン!という大きな破壊音を聞くと何故かわかりませんがすーっと気がゆるみます。

腰痛も、肩こりも、うつも、「自分流の自然な生き方」ができない人に起こりやすく、自分に起きた感情を過剰に抑えてしまう傾向があるようです。

また理想の自分を強く持っていて、現実とのギャップに苦しみ「あるがままの自分」を受け入れられないというケースも見受けます。

感じて動く、「あるがまま」の自分

「感動」という言葉があるように人間は感じて動きます。誰もが感じたとおりに動くことができるなら心も体もこわれないのですが、社会生活をしいられる人間の場合はそのようにいかないのがほとんどです。

当院がさまざまな技術を採用しているのはその人がゆるむための鍵を探すためですが、整体に限らず自分に合うゆるみ方を探して、そのままの感情をゆるして生活できるようになると、日常がある程度過ごしやすくなります思います。

「どうして自分は疲れやすいんだろう」と疑問に思う方は”考え方”ではなく感じている方に注意を向けてみるのも一つの方法です。

頭をリラックスさせて感情や体の感覚に気を集めることで、不調の原因に自分で気づき、今よりも楽になるヒントが見えてくるかもしれません。

治癒のプロセス