せい氣院

活元運動の効果

人間の体内には平熱や脈拍など普段からバランスを取っている身体のある「はたらき※」があります。野口整体の活元運動はこの「はたらき」を刺戟し訓練する方法です。

これを継続的に行うことで次のような効果があります。

※このはたらきは錐体外路性運動系、恒常性維持機能などと呼ばれる。

深くやわらかい呼吸になる

活元運動を継続的に行なっていくことで、身体中の緊張が徐々に抜けていきます。その結果、横隔膜の動きがやわらかく大きくなり、呼吸が深くなります。

実際の活元運動の様子は人それぞれですが、どのような人でも共通することはどんなにはげしく動いても息が上がらないことなのです。

息という字は「自分の心」と書きます。呼吸が浅くなることは血中酸素の低下と、血液循環の非効率化を招き、その結果万病を引き寄せてしまいます。またこのようなときには心の余裕は失われ、良い考えも浮かびません。

ゆったりと深い呼吸ができることは、活元運動で最初に得られる重要な効果の一つと言えるでしょう。

重心が下腹部にさがる

現代を生きるの多くの方は日々さまざまな情報の波にさらされており、思考の休まる暇がありません。

その結果、首や肩のこわばりは当り前となって、逆にお腹の力は抜けてしまっています。このような体勢になると交感神経のはたらきだけに偏り、生理機能を正常に保つことが難しくなってきます。

活元運動によって上半身のこわばりが抜けると、自ずから重心は下半身へを下がってきます。これは「上虚下実」といわれる状態で、東洋的な身体観や生命観においては古来から理想とされてきた姿勢です。

またこのときには正坐も楽に行え、精神的にもゆったり、どっしりとした安定感を味わうことができます。この状態を日常的に保つことができると、健康面でも生活面でもさまざまな恩恵を受けることができます。

意識の鎮静化

活元運動をひとしきり行なって自然に運動が止まる頃には、独特の鎮静した意識状態になります。

近年では坐禅や瞑想、ヨーガなどによって精神的な安定を求める人が増えていますが、活元運動を終えた後の静かな感覚というものはこれらの瞑想で得られる感覚と同質のものです。

野口整体では「ポカンとする」という表現をよく使いますが、この時に自律神経系は正常にはたらき、身体の生理機能がもっともバランスの取れた動きをしています。

「心の平安」というのは誰もが求めるものだと思いますが、ここに至るための身体的アプローチとして活元運動は非常に有効です。

自己実現(自分らしく生きるための個性化)

実はこれが活元運動、ひいては野口整体という身体教育における最重要の課題とも言えます。

呼吸が深くなり重心が下がること、そして頭がポカンとすることで、無意識の動きが活性化します。その結果普段は認識されにくい感情や古い記憶が意識化され、心の再編が行われるのです。

実は人がさまざまな病気に罹るのも、この心の再編(自我の再構築)が目的なのです。

活元運動を訓練として定期的に行う人は、この病症経過で得られる自我の再構築を、普段的に少しずつ進めていくことになります。

つまり環境に対する適応と、自身の無意識(本心)に対する適応が自然と保たれ、自分自身が「このように生きよう」という要求と実際の生活とのギャップがだんだん小さくなっていくのです。

これが自己実現の実態であり、自分らしい心を養い生きていくための重要なプロセスです。