腰痛(慢性)

腰痛の中でも、急性のぎっくり腰は一年を通じてなりやすい時期が限られていますが、慢性的な腰痛は季節に関係なくいつでもあります。痛み方もそれぞれですし、原因もばらばらです。そうした中でも、当院なりの腰痛に対する「見方・考え方」がありますのでご説明いたします。

腰痛の原因は腰にはない?

せい氣院にご相談に来られる方の中には、以前に他の治療院(整骨院や整体院)に通われていた人もいます。そこで腰痛を診てもらうと大抵は、「この腰痛の原因は腰ではありません」と説明されるようです。それが足首だったり、膝だったり、食べ過ぎ(胃腸の疲れ)だったり、そして色々な方法で各部を調整する、という具合です。
確かに人間の身体は有機体ですから、生きていれば身体中、関係のないところはないのです。指一本動かすようなことでも、それが「目」とか「胃袋」の動きにまで影響があるのです。

ですから、世の中には「足だけを専門に整える」ような治療法(健康法)も存在しますし、頭蓋骨と骨盤の調整だけでいろいろ病気を治すようなことも可能です。一ヵ所をいじれば必ず全部が動くため、このような技術が行なえるのです。
そういう意味では、「腰痛だからといって腰そのものが原因ではない」ということも確かにその通りです。ただしそのように見立てをしたうえでも、身体各部の「つながり」を利用することで治る腰痛もありますし、それだけではスムーズに治らない腰痛も沢山あります。

何より大事なことは、「その人」を観ることです。心を含めた全体のバランスが整うように、自覚しづらい身体各部の緊張を取り除くことが大切です。「腰痛」だからといってどこかに固定的な原因があるとは決めつけずに、「この人の腰はなぜ痛むのか?」を、大局的に捉えて新たな気持ちで観察していくことが肝要です。

腰痛は本当に「怒り」なのか

『腰痛は怒りである』という本がありますが、近年は身体の痛みと感情活動の関係について科学的医療の分野でも注目をされるようになりました。腰痛のみならず身体上に現れた痛みや疾患において、「心」が関係していないものは一つもありません。こう言うと、「えっ」とおどろかれる方がいらっしゃるかもしれませんが、日々色々な方の「生きた」体験をもとに身体を観ていますと、こういう見方の方がよほど自然だと思えるのです。

ただし、「怒っているから腰が痛い」のかというと、私が感じ、観ている身体観とは少し違います。怒ったものを「抑えて」いたり、怒りの感情があるにもかかわらず「本人に自覚がない」と、身体が偏って、やがて腰が痛くなることがあるのです。ですから、腰痛とは「自身の不快感を充分に自覚できていない人」が起こす故障であると考えています。

どうすれば良くなるのか

先に書きましたように、「腰の痛み」は感じていても、自分自身の不快情動に対してほとんど(ときにまったく)自覚のな方は存外に多いのです。ですから当院のやり方では、まず自分の心(感情)に気がつくように、身体の緊張している箇所に触れながら、よくお話を伺うようにしています。職場や家庭環境などでイライラしたことや、驚いたこと、不安になったことがなかったかを丁寧に振り返って見ていくことが治癒の始まりです。私はこれを「感じ直し(治し)」の作業と読んでいます。

怒りや不安、悲しみ、焦りのような感情がそれに見合った行動で発散されていれば、身体は偏りません。つまり泣いたり笑ったり、怒ったり、ということが身体上に活き活きと現れていれば、それは後々の身心にシコリを残さないのです。
ですが、社会(集団)生活を送る人間にとって、そのように感情に直結した行動がいつも円滑に行われるとは限りません。そのために、こうして時おり自分自身の心の生活を振り返って、点検する場を設けることが健全な身心を保つうえで重要な意味を持つと考えています。

身体感覚の向上

身体はもともと、「どう動けばいいのか」を知っています。さらには「自分がどう生きればいいのか」までも、「感じて」判っているのです。ですが、現代人の多くは、頭(理性)が高度に発達したためにこの身体を「感じる力」が極端に弱まっているのです。一般的な治療法というのは、そのように鈍った身体感覚の方は取り合わずに、とにかく痛みが消えるための方法だけを探して適用するものがほとんどです。

心の偏りを直さずに、体の形だけを外から「整えた」だけでは保てないのです。治療院などで上手い施術を受けても、時間とともにまた同じような偏り疲労を起こして、腰痛が再発してしまうケースが多いのはそのためです。
これに対し整体指導では、身体を痛めたり、自ら壊すような使い方を改められるように身体感覚を磨くことを専一に行っていきます。身体の感覚が発達、成長することで自分が何をどう感じているか(感情的体験)もよく判るようになるからです。

このように同じ腰痛患者といってもそれぞれ全く異なるレベルにある「身体感覚」を、個別に観ていくことで、自分自身の「どこに問題があって」、「どうすれば解消できるのか」をその都度考える、というのが当院の一貫したスタンスです。一回で劇的に痛みが消えるような方法ではありませんが、自分自身の身心をしっかりコントロールできるように堅実に取り組みたい方に適したやり方であると思っています。