治癒のプロセス
命というのは本来はこわれてもまた治るものであり、身体が正常であるなら、絶えず何処かをこわしたり治したりしながら健全な日々を送っています。
しかし「慢性病」という言葉が象徴するように、人間にはなかなか治らない病気や同じような怪我・痛みを繰り返してしまうこともよく見受けられます。
このように、ある特定の状況において肩こりや腰痛が慢性化したり、あるいは癌や肝硬変など難治性の病症が存在するのは何故なのでしょうか。
身体の正常なはたらきを妨げるもの
先に述べたとおり身体は生まれた時から命を全うするために活動しつづけます。健康ということは、こうした生命の自然がそのまま身体上に現れていることです。
ところが人間は精神活動を生活の中心とした生き物であり、感情の状態が身体に大きく作用します。例えば強制によって自分の意思に反して行動していると体力は充分発揮できません。逆に、自発的に動けば同じ荷物を背負って歩いても軽く感じます。
このような感情の動きによって身体の無意識的なはたらきは影響を受け、その中で身体の自然治癒力も活発になったり逆に妨げられたりしています。
病気の種類は無限にありますが、その元には程度の大小はあっても不快情動というものが必ず介在しています。この感情をどのように消化していくかということが整体やカウンセリングでは重要な仕事になります。
身体の緊張と心の滞り
「整体(健康)である」とは快活な心が一定に保てる状態です。心が自然であれば身体も活発に動きます。
一般には心や感情は脳の中にあると思われがちですが、不快情動というのは運動系の筋肉の緊張(コリ)となって現れています。
つまりコリというのは筋肉の無意識的な緊張というだけでなく、ある種の感情がロックして同じ思考から抜け出せなくなってしまった状態をも意味しています。今は心の病が注目されていますが、その代表ともいえる「うつ」というのもこの延長にあるのです。
そして身体のコリはその部位の力みを自ら認識することで、自然とゆるんでいくという性質があります。
ゆるむと治るわけ
以上のことから、整体では特に「ゆるむ」ということを身体が治るプロセスで重視しています。びっくりした時や緊張した時に、力を入れるということは訓練をしなくてもできますが、緊張が去った時に「ゆるむ」ということがなかなかできなくなっている身体をよく見かけます。
身体は緊張とゆるみがバランスよく繰り返されていると、自律神経が正常にはたらいて免疫力も自然治癒力も高まります。
現在日本で行われている都市型のボディワークでは、いかにゆるめるかということに焦点を絞っているものが多いのはそのためだと思います。
整体では身体の中でも特にバランスを崩すポイントとなっている筋肉の緊張を一つ一つ見つけ出して、気の手当てである愉気法により解放していきます。このような筋肉の緊張がゆるむと身心ともに主体性(いつもの自分)を取り戻すことができるのです。
身体に緊張・弛緩のメリハリが戻るにつれて感情も自由になり、外側だけでなく内面からも元気になっていきます。
この状態を一定期間保っていくことにより、自然治癒力の及ぶ範囲内で心身は徐々に癒えていくのです。